もくじ
 1.聖刻
 2.操兵
 3.操兵の種類
  3−1 狩猟機
  3−2 従兵機
  3−3 呪操兵
 4.練法

 本シリーズの特徴は、聖刻や操兵などの独自の設定にあると言っても過言ではありません。
 ここでは、これらのシリーズに共通する設定について解説します。

1.聖刻
〈聖刻〉とは、異世界から力を引き出す魔道の物品の総称です。

 聖刻は〈聖刻石〉なる鉱石を加工し、ある規則に従って並べられたものです。多くの場合、聖刻石は8行8列の方形に配列され*1、台座となるものに埋め込まれます。この台座の形状が仮面の形のものが〈仮面〉と呼ばれる、最も一般的な聖刻です。

 仮面は、祝祭や儀礼などに用いられる異形の面の形をしています。聖刻石は、この裏面に配置されているものが一般的です。
 大きさはさまざまで、人間の顔にちょうど合うものもあれば、盾に使えそうなほどの大きさのものもあります。
 人間用の仮面は、主に〈練法〉なる魔法的な秘術を用いるために使われます。
 また、盾大の仮面は、多くが〈操兵〉に用いられるものです。

 聖刻には、この他にもさまざまな形のものが存在します。石板状のもの、錫杖の形状をとっているもの、武器の形のものもあると言われます。

2.操兵

ワースブレイド
TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)ワースブレイド。1989年夏発売。イラスト中央、背後に立っているのが操兵です。
〈操兵〉は、頭頂高2リート*2(約8メートル)ほどの鉄の巨人兵です。巨大な部品を鍛冶師が鋳造、鍛造して作り出す。
 あくまで職人の手仕事によるものなので、一品物が基本となります。同型、同名の操兵は登場するものの、あくまで同じ形、同じ名前で呼んでいるだけのことで、いわゆる工業的な量産品とは異なります。*3

 機体は人体の構造を模した作りになっています。鉄製ですが、人間のそれに似た構造の内骨格を持ち、その上に鎧兜を着せることで、操兵独特の外観を作り出しています。
 人間が乗り込む箇所である〈操手槽〉は、機体の中央、胸の奥まった場所に設けられています。機体の背の高さからもわかる通り、操手槽の空間はそれほど広くはありません。
 各関節には、伸縮する軟質の管の束が取り付けられています。これは〈筋肉筒〉と呼ばれます。筋肉筒の末端には導管が取り付けられていて、この管を通じて血液と呼ばれる特殊な液体(実際に色も赤い)が流れています。
 また、機体全体には別系統の導管が、特に関節部周辺を中心に巡らせられていて、ここには冷却用の水が流れています。この導管の結節部には弁が設けられていて、冷却水が気化して内圧が高まると、弁が開いて蒸気を排出する仕組みになっています。
 操手槽の直下には、血液の導管が集められ、接続された装置があります。これは心肺器と呼ばれ、その名の通り、ふいごの動きで呼吸するかのように外気を取り込み、同時に血液を機体全体に巡らせる役目を果たします。

 操兵は、仮面を取り付けることによって動きます。正確には、仮面を取り付けると同時に心肺器が起動し、血流が生まれるとともに機体が稼働状態に入ります。
 しかしながら、操兵が動く原理はほとんどわかっていません。はっきりしていることは、聖刻(仮面)を装着する以外、なにをしても操兵が動くことはないということ、また、仮面さえ装着していれば、心肺器や筋肉筒がなくても動いた例が、ごくまれにではあるが確認されているという事実です。

 構造上、操兵の急所は心肺器だと思える*4が、最大の急所は仮面です。仮面を破壊された場合はもちろんですが、軽い衝撃を受けただけでも一時的不稼働に陥る場合があります。このことからも、操兵を止めるには仮面を狙うのが最も効果的だと言えるでしょう。
 なお、仮面にはそれを守る面頬が取り付けられていることがほとんどですが、分厚く覆うと操兵の能力を低下させることがわかっています。このため、操兵の顔面を狙うのは、操兵を持たない兵士の常套戦術となっています。
 ただし、稼働中の操兵の頭部に攻撃を命中させるのは、容易なことではありません。

3.操兵の種類
 操兵は、いくつかの種類に分類できます。
 一般に操兵とされるものは、〈狩猟機〉と呼ばれる種類がほとんどです。また、狩猟機の補助や荷物の運搬、集団戦用に用いられる低級な機体は〈従兵機〉と呼ばれて区別されます。狩猟機と従兵機は、頭部のある、なしで見分けられます。
 大半の操兵はこの2種類に属するが、この他にもう1種類〈呪操兵〉なる機体が存在します。これは後述の〈練法〉と呼ばれる魔法的な術法を使うもので、非常に稀な存在です。

3−1 狩猟機
 人間の鎧武者を2リートの大きさに引き伸ばしたような機体。一般的に操兵といえば、この種類をさします。
 格闘能力は、操兵の種別の中で最もすぐれています。あらゆる武器を使いこなす器用さを持ち、敏捷性も高いと言えます。 欠点としては、操縦の難易度が高くなる傾向にあること、また、〈操手〉*5を選り好みする場合があることが挙げられます。選り好みする、というのは文字通りの意味で、操兵が好もしく思わない人間の搭乗や操縦を拒否する場合があるということです。*6

3−2 従兵機
ガレ・メネアス〈従兵機〉は、いわば簡易版操兵と呼ぶべき存在です。
 従兵機の最大の特徴は、頭部を持たないことです。仮面は胸部に取り付けられることがほとんどで、ごく一部の試作機以外、例外は確認されていません。
 狩猟機は先史文明にも存在しているが、従兵機は古代には見られなかった機体です。狩猟機に比べてずんぐりとした外見をしていて、特に脚部は短く、逆に腕は長い傾向があります。指先は狩猟機に比べると作りが大きく、繊細さに欠ける。このため、扱える武器にも限界があり、手先の器用さを求められるような剣などはあまり使われません。
 従兵機は、狩猟機に比べると乗る人間を選びません。それでも、誰でも乗りこなせるわけではなく、きちんと訓練を受け、仮面に受け入れられるこつをつかんだ者だけが動かせることにかわりはありません。*7

3−3 呪操兵
〈呪操兵〉は、〈練法師〉と呼ばれる〈練法〉(4節参照)なる術を使う人間のみが操る操兵です。
 呪操兵はそれ単体では従兵機なみの耐久度、膂力しか持たない場合がほとんどですが、乗り込んだ練法師同様に練法を使うことができます。練法には空中浮揚や飛行の術が存在し、一般的なものであるため、ほぼ全ての呪操兵は空を飛ぶことができます。
 また、他の操兵では弓矢を使う以外離れた場所への攻撃を行うことができないが、練法によって非常に広範囲に強力な打撃を加えることが可能です。
 このことからもわかる通り、呪操兵は場合によっては狩猟機の1軍団以上の戦力となりうる。
 また隠密行動も可能であるため、練法師の乗機として、大陸中を網羅する諜報活動に用いられることもあります。

 従兵機、狩猟機の数に比べればはるかに少なく、すべてが一品物と見て間違いがありません。
 特にすぐれた呪操兵は、古代の先史文明が作り出した仮面を必要とするとされ、一度仮面を失うと二度と同程度のものは手に入らないと言われます。
 非常に特殊な機体で、操兵の仮面と対になる人間用の仮面が必要であり、この人間用仮面をつけた練法師でなければ動かすことができません。

4.練法
 練法とは、指先を使って結ぶ〈印〉と声による詠唱によって聖刻の力を引き出す技で、なにもない場所から炎や雷を呼び出したり、瞬間移動したり、無機物に生命を与えたりします。
 練法を使うためには、使い手(練法師)が仮面をつけている必要があります。仮面は操兵同様に練法師の弱点となります。
 練法の術は、〈表門〉と呼ばれる陽/金/火/木、〈裏門〉と呼ばれる月/風/水/土の8系統に分かれています。表門、裏門はそれぞれに対応する門があり、それらの対になる門は〈対門〉と呼ばれて、それぞれの術は打ち消しあう傾向にあります。
 また、門の並びは便宜的なもので、少なくとも術の力などに優劣はありません。組織によっては、この便宜上の並びをそのまま地位の順列に持ち込んでいるものもあります。

 各門の特徴は次の通りです。

表門
陽門:太陽の光やそれから想起される効果の術を使う。対門は月門。
金門:金属や力学的な効果の術を使う。対門は風門。
火門:火炎、高温、爆発などの術を使う。対門は水門。
木門:生命(特に植物)に関する術を使う。対門は土門。

裏門
月門:月の光や時間に関する術を使う。対門は陽門。
風門:大気の流れや気象に関する術を使う。対門は金門。
水門:水、低温に関する術を使う。対門は火門。
土門:大地と死に関わる術を使う。死霊術師の性格が強い。対門は木門。

*1 もちろん例外も多く、古代の聖刻に至っては、聖刻石の数も不定です。

*2 1リートは約4メートル。
*3 ただし、聖刻群龍伝、聖刻1092の時代には、ある程度量産と呼んでもいい生産方法が確立していると思われます。また、先史時代の高度文明には、完全な量産品としての操兵も存在しました。
*4 実際、操兵同士の戦いでは、心肺器を狙うことが多いと言えます。再利用可能なため、仮面は可能な限り破損を避ける場合がほとんどです。

*5 操兵の乗り手の呼び名。
*6 この「操兵が好もしいと思う/思わない」基準は、はっきりしていません。能力の高さ(あるいは低さ)、血筋などが関係している場合もあるが、外見だったり、言動が影響していると思われることもあります。これは例え話ではなく、操兵の前でその悪口は思っても口にしない方がいいようです。思うだけで感じ取る操兵も存在するようですが。
*7 例外的に、生来の才能で訓練なしに乗りこなす人間もいます。これは血筋やなんらかの処置を受けた者だけに見られるもので、大半の人間に期待できることではありません。