デイル編のアゾームは、〈討竜の仮面〉という練法師用の仮面を持っていました。
これはその名の通り、竜を討つために作られたもので、やはりデイル編の中で語られた聖者の仮面編に出てきた狩猟機サーズディンと密接な関係にあります。
もともとサーズディンは、エンズディンという竜狩りのために作られた古操兵群の1体で(それを言えば、そもそも操兵は竜狩りのために使われていた。狩猟機とは、竜を狩る機体という意味)、単独で狩りを行うためのカスタム機でした。
このため、サーズディンは特に〈戦士(デール)〉と強く同調して能力を発揮するように調整されており、機体の系統は近くにあったモニイダスのガーヴスに近いものとなっています。もともと、エンズディンとモニイダス系の操兵は兄弟関係にあり、西方を一度滅ぼした古操兵群の軍神、巨人の末裔にあたります(エンズディンの創造主たちやモニイダスの人々は、滅亡を免れた古代人の召使——アハル——の子孫)。
当時は亜竜、真竜が現在の比較にならない数存在しており、特に人間を敵視していたため、それに対抗するべくこの時代の古操兵群が作られました。
さて、話をもとに戻します。
討竜の仮面は、これらの操兵とともに竜を滅ぼすために作り出されたものでした(操兵を指揮、援護するためのものだった)。ただし、精度が高いとはいえ、軍神、巨人の模造品だった古操兵たちに対して、討竜の仮面は古代の技術をそのままに再現された、強大な力を持つ魔道の器でした(というわけで、その秘匿場所が軍神の記憶を保存する場所だったのは、けっして偶然ではありません)。
アゾームは竜に取り憑かれた人間だったため、その支配から逃れる方法を探していました。それが、この仮面だったのです。
本能として竜と戦うことを刷り込まれているこの仮面は、当然アゾームの中に潜む竜と戦うことになりました。完全に駆逐はできなかったものの、その力は完全におさえこまれ、結果として竜によって支配されていた時には忘れていた恐怖心が復活し、亜竜を見て怯えるようになってしまったわけです。
まあ結局、復活した討竜の仮面は本物の竜と戦うことなく、その強大な力を別の目的のために使い果たすことになるわけですが、最後の対決を企図して実現した連中(ゴーランとかリッシュ・マナーとか、あと黒竜神も)も、そこまでは想定していなかったようです。つまりあれ、最後のあのひと押しがなかったら、たぶん結果は真逆になっていたんじゃないかと思われます。
かなりネタバレ入ってますが、大丈夫、ネタバレ上等な話なので。デイル編。
日下部匡俊