吐炎具というものが、デイル編の最後に出てきました。
要するに火炎放射器のことです。しかし火薬もなく、液体燃料も鉱油を精製する技術が未発達なので、おそらくアルコール系しか調達できない(それですら蒸留とか何度も繰り返さなきゃならなくて大変)中世レベルの文明しか持たない世界で、どうやってそんなものを作り出したのか。

まあぶっちゃけていえば、全部インチキやってるんですけどね。
そもそも操兵みたいな鉄の塊を、何回か吹き付けただけで稼働不能まで追い込むような火炎放射器が普通のもののはずがありません。書きませんでしたが、この装置には練法が使われています。正確には練法の効果を発生する装置を仕込んだ代物です。
ズィーダル・ハークスが後半使ってた剣(魔力を封じたカートリッジを消費して、機械的に練法を発動する)がありますが、あれと原理は同じです。あの剣はゴーラン結社という、太古から続く秘密結社が秘匿していたものですが(ゴーラン結社はまた出るよーっていうか、連中もあの地下都市も、剣の物語が本番)、別に他の連中が似たようなものを持っていても不思議ではないってことですね。どこかでそういう系統の道具を発見して、リバース・エンジニアリングやった結果生まれたのがあの吐炎具なわけです。
練法には消えない炎の術があるので、それを応用しているようですが、あれだけ劇的な効果があるということは単なる〈練炎〉の術ではないことは明らかです(術として1、2段階高い程度だとは思いますが)。燃料としては、そういう術を使えばもう水でもなんでもよくなるので、加温すると劇的に破壊力が上昇する(可燃性や有毒のガスを発生するとか、強酸性化するとか)化合物の溶液を用いていたのだろうと推測されます。

後に着火性の向上のため、無理やり発展させた石油化学技術を用いて作り出した燃料と、さらなる高位の術を組み合わせて、とんでもないことをやらかす連中が出てきますが、それはまた別の話。ああ、早く披露できないかなあ。

日下部匡俊