そうそう、こないだ年代記に出てくる神さま、ぺガーナの八柱と黒竜神だけだって書きましたが、もう一匹いましたね。ナルガ神ね。東方の、1000年前に干渉してきたやつ。
あれは自然の法則とかではなくて世界にとって異物なんで、ああいうわかりやすい形でしか侵入できなかったわけです。肉体があるので弱点もある。度外れた力の持ち主なら、肉体破壊して追い払うことも可能って感じ。
これが自然の一部（あるいは全部）になっちゃうと、さしもの〈八の力〉も対抗しようがありません。あ、八の力って八の聖刻の異次元バージョンです。このパラレルが前提の世界において、唯一全並行世界に（あり方は世界ごとにちょっとずつ違うけど）存在する強大なる８つの力。世界の操る武器と言ってもいい。そりゃあ、天変地異起こしておいて「まだ万分の一の力しか発揮してない」わけですよね。
東方の一国、〈梗醍果〉と呼ばれるところの王にショク・ワンというのがおりまして、こいつにまといついて悪さばっかりしてた幼馴染にゼン・イクというのがおりまし「た」。
彼は残念ながらショク・ワンの何倍も頭がいいので、うまく幼馴染に取り入って図書寮とかに入り浸ったり遺跡を巡ったりして、古の民が異世界の神さまを呼び出して大変なことになりかけたという事実を知ったのです。そして、古の民の使った手段で、連中よりそれをうまくやってのければどうか、と考えたわけです。
恐ろしいことに、その試みは半分くらい成功しました。最終的にはナルガ神の侵入は回避できたんですが、神々が世界の境界を越える方法や、世界そのものというか宇宙の成り立ちについて完全に近い知識を手に入れてしまったのです。まあ時間はかかったんですが。
そして、彼はショク・ワンの目の前で神々の世界へと渡って見せたんです。いろんなトラブルを置き土産にして（あれ、トラブルって程度の言い方でいいのか？）。彼の前では、前述の八の力も、異界神もなにもかもただの道具、あるいは知識を得るための手段に過ぎなかったんですね。
いやまあ、そこまでして彼が得たものは、あれですよ、一般人が旧支配者の領域に裸で入っていくようなもので、毎秒10d100でSANチェックの連続やってるような地獄なんですけど（デイル編のアゾームが、精神だけ連れて行かれたあそこ。実はアゾーム、あとちょっとあそこに長居したら発狂まったなしだったっていう）。まあ神さま的な力は手に入れたみたいで、時間軸は見通せるようです。
ゼン・イク自身は単純に好奇心と、ショク・ワンを困らせたい一心でやったことなんで（な ん だ と）、満足ではあるようですが。
ああ、というわけでもう一柱出てますね。ゼン・イク神が。泡沫ですが、神さまには違いない。
日下部匡俊
以上が、『剣の聖刻年代記・梗醍果の王』全９巻の軽いネタバレであります。いやそんなこと書くつもりなかったんですが、よく考えるとゼン・イク方面の話はわざとぼかして終わらせてたんだよなあと思い出しまして。なので本編読んでも、ここに書いたことに気づかない可能性が高いです。
そういう意味で読解の一助になってくれればとも思ったんですが、世の中にはネタバレのせいで話を読む意欲が失われる人もいるので、まあ冒頭にあんなことを。
そして、『梗醍果の王』で放たれたロングパスが、デイル編あたりの超々ロングパスやらなにやらとごっちゃになって、いま絶賛書いてる中の『剣の物語』あたりで着地してるんですよこれが。デイル編も１巻の伏線が10巻で出てきたりして、なにやってんだ感強いんですけど。いや、当時の読者の皆さまには、散々振り回して申し訳ないことです。