黒竜戦争の冒頭を見てもお分かりの通り、古代西方を滅亡させた大戦争の折、軍神/巨人を作り出した超人たちはいずこかに姿を消し(大半は死んだんだと思いますが)、残ったのは、技術や知識を不完全な形で受け継いだアハル人たちだけでした。
その一部は主人たちの命令を忠実に守り(それも、何世代か経るうちに形骸化して、本来の目的は忘れ去られてしまいましたが)、主人たちの託した操兵の仮面(本体はとても運べなかったので)と、その血筋に埋め込まれたその乗り手たる〈戦士〉の血統を伝え続けようとしました(デールの一族)し、別の一派はかつての主人たちに決別し、独自の文明を築こうとしました。
四操兵のモニイダスや、操兵エンズディンを作った人々のことです。
不完全な形とはいえ、彼らの受け継いだ古代の知識と技術は、西方歴9世紀初頭のそれとは隔絶したものでした。
工呪会もまた同系統の技術と知識を相当量保有していますが、さすがに古代アハル人にはかないません。それは、工呪会が限定的にしか古操兵の修復を行えないことでわかります(とはいえ秘密が多すぎて、彼らの限界がどこにあるのかはわかりませんが。こうやって偉そうに書いてる自分にもわからんのでw)。
果たして、古代の超人たちはアハル人たちになにを託そうとしたんでしょうか。単に、自分たちが存在した証を後世に残そうとしただけって可能性もありますし、実際そういう連中もいたと思いますが、デイル編のオチはそもそも巨人と軍神が存在しなければ起こり得なかったわけで、いったん西方は滅ぼしたものの、世界そのものが混沌に沈まなかったのは間違いなく古代人たちの遺産のおかげだったわけです。
あるいは、四操兵がいなければ、闇の一者は西方の地に異界の精霊を解き放っていたかもしれません。これも結構な重大事で、ショク・ワンが1000年前にその侵入を防いだ異界神が西方を蹂躙していた可能性があって、黒竜神級の災害が起きていたことは想像にかたくありません。
エンズディンはアハーンに広がろうとしていた竜禍を未然に防ぎましたし(まだ語られていないお話がありそうな)、これらの全てに戦士の末裔が絡んでいたのも偶然とは思えません。
現在のゴーラン結社の人間やリッシュ・マナー、神々に仕える高僧たちが未来を読み取れるわけで、それが古代人にできなかったはずがありません。だとすれば、これらのことが彼らの計画のうちだったとしても不思議ではないかもしれません。
何千年もかけたロングパスが、ここまできっちり決まったってのも不自然(最後のアゾームの存在が予見されていなかったことが、唯一の例外とは思えませんし)ではありますし、なにからなにまで彼らの思惑通りってこともないとは思うんですが。
それにしても、古代人たちのアプローチはこれだけだったんでしょうか。それとも、まだなにか残ってるんでしょうか。
日下部匡俊