唐突ですが、TRPGはそのままではエンタメにはならないと思います。通常、ゲームのセッションはプレイしている本人たちだけのものであって、側から見ていて面白さが素直に伝わるかって言われればそんなことはないわけで。
ゲームでの会話(情報のやり取り)は、意味的にも声の大きさでも内輪で通じればいいわけで、はっきり発音して他人が聞きやすくする必要なんかないですし、プレイ中の状況把握にしても、ゲームに入っている状態なら自分から進んで取りにいきますが、観客にまでそれを求めるのには無理がありますよね。
いやこんなの、いまさらこんなふうに書かれるまでもないことでしょうが。
伸童舎では、来年初頭あたりに現在制作中の操兵闘技大会ボードゲーム(仮)のお披露目を含めた(他にも企画はあるので、それとの複合になりますが)イベントを計画しています。その場ではワースブレイドも遊べるようになる予定ですが、どちらもそのままでは楽しいのはプレイヤーだけで、他のお客さんは特別にゲームへの興味がない限り、なにかやってるな程度の認識しか持てないのではないか、と思います。
てなわけで、少なくともボードゲームでは、ゲームに解説をつけてみようかと考え中です(プレイヤーに操手のキャラを渡すのもその一環。キャラっていってもパラメータではなくて、プロフィール的な)。将棋や囲碁なんかと同じで、でっかい盤面を映してゲームの状況を解説するわけですね。ボードゲームは割と流れや結果がわかりやすいので、解説さえきちんとできればそれなりに形になるんじゃないかと思ってるんですが、問題はワースブレイドの方でして。卓を囲んで楽しんでもらうってだけでもそれはそれでいいとは思うんですが、今後TRPG化の野望もあるわけですし、ここでのセッションも観客が楽しめるようにはできないかと考えているわけです。
まあこの辺大変で、まずプレイヤーには滑舌がよく、かつ相応に芝居めいた喋り方もできる人でなければ厳しいかと思われます。人に見せるのが前提なので。
TRPGがどういうものかご存知の皆さんなら、マスターやプレイヤーの言葉が聞き取れさえすれば十分かもしれませんが、これが初めてTRPGに触れるという人には、さらにわかりやすく噛み砕いた見せ方が必要になると思われます。実は、こういうイベントをやるということは、そういう人々にこそ興味を持ってもらいたいという意図がありまして、ここは外せなかったりします。
ワースブレイドは残念ですが古いゲームです。モダンなTRPGとは異なり、洗練されていない部分がたくさんあります。プレイヤーが意欲的に楽しもうとすればどうにでもなりますが、少なくとも入口は広くありません。いろいろ工夫して、初めての人にも入りやすいようにする予定ではありますが、さらに歩み寄る必要があるのは間違いないところです。
ボードゲーム同様、これに解説者を加えることは当然考えていますが、解説の範囲がボードゲームよりもはるかに多岐にわたる(抽象的な要素であるストーリーが入ってくるので)ことと、機械的に解説してもゲームの面白みが伝わる可能性は上がらないので、解説者にも演技者としてのスキルが必要になってきます。
理想を言えば、TRPGを熟知してる声(俳)優さんにマスターを含むプレイヤーをお願いして(うまくすればキャラまでちゃんと演じ分けてもらえるぞ!)、解説者まで声優さんとはいかなくとも、口の立つ(できれば軽く笑いの取れる)人間が当たれればというところですが、もちろんこんなもの現実的な話じゃないので(てーかそれだけでお客さん呼べちゃいますがな)、できるだけそれに近いところに持っていければ、と考えている次第です。
ここまで来ちゃうとTRPGを遊んでいるというシチュエーションの演劇を見せているのも同然ですが、まあそうです。ただ、それ自体が遊びとしてフェイクでも、TRPGがどんなもので、どう楽しいのかを伝える役には立つんじゃないかと思っています。
ま、結局やってみないと本当のところはわからんのですけどね。
日下部匡俊
『クトゥルフの呼び声』のプレイを、場面ごとのイラストとプレイヤーの声を吹き込んだムービーで紹介しているものが数百万閲覧されているという実例があるので、この方向性は決して間違ってないと思ってはいます。もちろん、現状のクトゥルフとこっちの知名度や人気の具合を一緒にしちゃいかんのですが。