聖刻は聖刻石を8×8で配列してどうこうとちょっと前に書きました。こうして作られた聖刻を利用して、操兵や練法を駆動する力を引き出すわけですが、では聖刻石とはどういうものなのか。
狩猟機1092では、結晶生命という書かれ方をしていました。もっとも、それは操兵より大きい巨大なものでしたが。
異界の力を引き出すという得体の知れない代物ですから、それ自身が超常の存在であることは動かないところかもしれませんが、物体として世界に安定して存在する以上、自然物としての一面も持っています。力を失えばただの石ころに変わりますし、それ自体は他の物質と大差ないもののようです。
しかし、聖刻石は適切に処理をすると擬似的に聖刻として機能します。練法師の見習いが、仮面のかわりに聖刻石を発動用の媒体として持っていますが、まさにそれです。このことから、聖刻石はこの世界と異界(精霊界?)に同時に重なって存在する物質ではないかと考えられています。見習用の石は、この状態をなんらかの方法で変位させることによって、小規模な聖刻を作り出すという処理が行われているようです。
この処理は一般に切削(カット)と呼ばれていますが、本当に石を削っているだけなのかどうかは怪しいところです。ごく精密に機能する聖刻石をコピーしてカットしても、大抵は石が死んでしまうからです。石そのものの個体差もあって、それに合わせてカットを行わなければならないということはほぼ確定的ですが、それ以外にも未知の要因が潜んでいることは明らかです。
有力な説は、ある種の呪術的な儀式が行われている、あるいはより大きな聖刻石から細分化される形で切り出されているなどですが、複製に成功した報告がないのでなんとも言えません。
実際、聖刻石は、自然状態では大きなものが分裂して小さなものが生まれます(加工された聖刻石がどのように作られているかは不明)。少なくとも一般的には、物理的に割った場合、いいことはないようです。このことから、聖刻石の加工ではなんらかの方法で分割を促す手法が用いられている可能性もあります。
また、石は他の石の力を吸うことがあり、稀に大きな力を得た石が巨大化することが知られています。ただし多くの場合はより大きな石が小さな石の力を吸うことが普通であり、聖刻として構成された存在の方が石単体よりも優位であることがほとんどです。
ここまでの内容からすると、聖刻>>聖刻石のように思われますが、実はそうでもありません。
真・聖刻(八の聖刻の本体)は1個の聖刻石であることが知られているからです。厳密に言えば、真・聖刻はその聖刻石そのものではなく、真の本体はこの世界に存在しないのではないかと考えられています(真・聖刻が失われても八の聖刻が復活した例が報告されている)が、この大きな聖刻石がこの世界における力の中心であることは間違いありません。
聖刻の大地では、操兵鍛冶が仮面まで作ることができますが、聖刻石は自由にできません。特別な石を特別に配置しなければならないってほど難しいわけでもないようですが、自前で調達するのは難しいようです。結局拾ってくるしかないわけですね。でも、死んだ仮面から再利用することも不可能ではないですし、とりあえず石さえ手に入れば仮面として構成することは可能なようです(石のばらつきによって思ったよりパワーが出なかったり、想定の数倍のパワーが出ちゃったり。過剰な出力はいいことばかりじゃなくて、機体の設計強度を超えちゃって壊れちゃうことがあります。昔はパワーアップは純粋に機体の強化に繋がったんですが)。
日下部匡俊