ブレードランナー2049観てきました。
人を選ぶ映画ですね。非常に上質ですが。なるほど、あれでは確かにディズニーの全年齢対象作品の興収なんか望むべくもない。子供にゃちょっときつい描写が多いし。たぶん、無理に見せたらトラウマになっちゃうんじゃないかな。
でも、深い話でしたね。このやるせなさをどこにぶつけたらいいんだろうっていう。いや、たぶん主人公はあれでよかったんだと思うんですけど。
ぎりぎりネタバレになってないよなふー。
人造人間つーと、フィルム上の表現としてはデータ少佐が極北だと思ってたんですが(演技そのものはステレオタイプだけど、哲学やるわ、人情モノやるわですごいですからね。コミックリリーフの一面も強いけど)、いやなかなかどうして。表現の解像度が上がってると言うべきなのかもしれないけど。
ワースブレイドにはマイイールとレインダーラという超人間が出てきますが、これ、練法師が超絶な修行の末に化ける代物なので能力はもちろん、精神的に人間のそれじゃなくなっています。
年代記にはマイイールに「なっちゃった」男が出てきます(修行もなんもしてないのに、強制的に変身させられる短剣で刺されちゃった)。そんなわけで、一見するとただの人間が負の生命(≒アンデッド)のすごく強いのになっちゃっただけに思えますが、彼、ネグマッツの精神は肉体が作り変わっちゃっているので、やっぱり人間のそれではありません。
なにせ、いろんな苦痛の方向がまるで違っちゃってるので、かりに他者への共感能力が高くて思慮深い人物でも、苦痛を与えないように配慮してもかなりとんちんかんな(そして笑えない)ことをやらかしてしまうわけです。
もちろんネグマッツはそんな人間のできたやつではないので、自分のあってる目に他人もあわせてやりたくてうずうずしてますし、そもそも見えてるものがまるで違うので、言ってることもやってることも、そっち方面(霊界とか精霊界とか)寄りで、もう完全に頭大丈夫って思考回路になっちゃってるわけですね。だから時々怖いことを口走ったり、ニコニコしながら(ってそういう顔じゃないな)人間切り刻むとか腐らせるとかやったりします。本当に深い悪意がなくてそういうことするんで、厄介で気持ち悪いです。
彼を支配しているカイザーンは割と常識人ですが、実力と強運とカリスマで従えているので、通常の上下関係とはかなり違っています。でなきゃあんな連中(変身竜人間——ちなみに黒竜戦争の冒頭でも別個体が出てます。アゾームもそう——や毒人間とか)従えて平然としてられるわけがないんですが。正真正銘の魔剣持ちの古操兵ギルダールもか(強い操兵も魔物みたいなところがありまして)。
こういう、見た目行動原理が普通に思えて、実は中身はまるきり違うという知的存在って、描写したりキャラクターとして演じるのはなかなか難しいことで、2049観てはたと膝を打ってきた次第です。打ったとは言ってない。
日下部匡俊