聖刻世界の文明は、基本中世レベルからあんまり進歩していないので、医術なんかもそんなものです。
もちろん、1092、群龍の描写を見るに、年代記よりは多少ましになっていると思われますが、なんせほら、あの世界まじないが力持っちゃってるんで、本気で医学を発達させる動機がいまいち弱いわけです。

年代記なんかでは僧侶が超常能力発揮できちゃうんで、ちょっとしたケガや病気、毒物はそれで治せてしまいます。それがたいしたものでなくても、実際の中世時代(いや近世でもいいけど)とはどれほどの隔たりがあるかおわかりと思います。人は、そのたいしたものじゃないことで簡単にいなくなっちゃうからです。
アフリカで児童に手洗いを徹底させた(透明な石鹸におもちゃを仕込んだらしい)ら、途端に生存率が大きく上がったという事実がありますが、公衆衛生ってものすごく大事なことなんです。で、年代記レベルの世界だと、手を洗えば病気にかかる確率が激減するっていう当たり前の知識を持っている人間はそれほど多くなくて、ちょっとしたことでも体調を崩す危険が大きいわけですが、そのかわりに回復する手段が存在するので、人の生き延びる率が上がってるんです。

もちろん、それでもあの世界の平均寿命ってたぶん30歳に届かないと思うし(年代記で西方全体で人口が2、3億かそれ以下。大陸全体でも倍行くかどうか)、そもそも人間の命が軽い世界なので(大昔は生命ってもっと扱いが軽かったので)、別の理由で生き残れない人間がたくさんいたんだと思いますが。
東方なんかすごかっただろうと思われますし。そのかわり、東方は西方の比じゃないくらいまじないの種類がいっぱいあるんで、民間療法レベルでもバカにならない治療効果があったりね。符術とか。

でも、術が使えないなりに論理的に医術を考えついて実践している医師(この場合「くすし」と読む)がいても不思議ではないし、ブラック○゛ャック的な活躍をしている輩がいるかもしれませんが。で、そっちの方が異端扱いとか(開腹手術とかやったら、そりゃあまあそうだよなあ)。それはそれで面白そうですね。

日下部匡俊