西方にはいろいろな人々がいます。アハル人、フェルム人、グリム人にラズマ氏族、そしてリッシュ・マナー、ケブレズなど。さらに名前を知る者がほぼいない少数民族は、両手両足の指の数に余ります。
多数の民族が混在すること自体は現実世界でも珍しくないのですが、ここまで全く異なった人々が混在する土地はなかなか珍しいでしょう。
アハル人、フェルム人たちは人口的には多数派なのですが、生来の能力的には平凡です。霊的能力の面では特に低いレベルにあるようです(その分、知性的に非常に高い人々が多い。著名な数学者や天体学者などが頻出している)。
霊的に非常に高いレベルにある人々は、リッシュ・マナーとケブレズでしょう。もともと同じ人種である彼らは、ラ・ムクトの大地に根ざす人々であり、特にリッシュ・マナーは、生来の土地に暮らす限り不老不死に近い生命力と、巨獣や魔獣の類と素手で渡り合う力を持つといいます。ケブレズはそこまでではないものの、霊的に竜の類すら従える能力を持つという実例が報告されています(デイル編のオルト・ナルト)。
グリム人は前回も書きましたが本来の西方の住人で、ラズマ氏族は黒竜神の庇護下のもと生まれた人々です。ラズマ氏族は身体的特徴が東方北部人に酷似しており、おそらく人種的には同一であろうと考えられています。
ラズマ氏族は、霊的にリッシュ・マナーに匹敵する親和性の強さを持っているようです。人口の1割近くがじつは僧侶であり、彼らは全て黒竜神に帰依しています。ただし、その僧侶たちを束ねるマルガルなる尼僧は、既知のどの人種でもないようです。接近して具に確認された報告がないため断定は不可能ですが、リッシュ・マナーに近いのではないかと言われています。
そもそも、リッシュ・マナー(ケブレズ)は他の民族とは異なり、どの地域にも近縁の人種を見ることができません。彼らは非常に体格が大きく、またグリム人を思わせる彫りの深さを持ちながら、体色は非常に薄く、体毛は色が薄いか無毛であることがほとんどです(ワースブレイドで紹介されたリッシュ・マナーたちのイラストが無髪なのは、剃っているからではありません)。
一説には、彼らは古代の超人たちの生き残りではないかと考えられていますが、その証拠はまだ見つかっていません。リッシュ・マナーの年長者たちはなんらかの事実を知っていると思われますが、彼らは黙して語らない(というよりそもそも会えない)ため、はっきりとしたことはなにもわかっていないのが現状です。
このように西方全体の民族構成を俯瞰すると、西方の歴史がおぼろげに見えてきます。さらに、このことから西方が将来向かう方向も見えてきそうですが、それはまた別の機会に。
日下部匡俊