聖刻世界はファンタジーの世界です。超自然の存在が普通にその辺にいて、辻褄の合わないことがいっぱいです。
そのくせ、ここまでの日記をいくつかお読みの方はおわかりと思いますが、いろいろな部分がかなり現実の理屈の上に立っています。これは簡単なことで、現実に存在しないものを設定するためには、一番手っ取り早いのが現実から「枠組み」を拝借することだからです(そのまんま持ってきてもいいんですが、応用がきかないのと、場合によってはアイデアのパクリ扱いになっちゃうので)。
わかりやすい例では、社会や宗教なんかの組織構成とか。独自の理屈で構成するのも面白いし、そういうのはぜひやってみたいところですが、そうなるとそうした集団の成り立ちや構造、構成員まで決め込まなければならず、大変な作業になります。それがメインならむしろそれをやるべきですが、聖刻シリーズでは一要素に過ぎないので、一般的な縦割りの組織の形式を使いました。
厳密にいえば、大規模かつ歴史のある宗教組織なんかあんな単純なものではないですし、いろんな思惑や慣習が絡んで複雑怪奇なものになっているはずなんで、現実とは全然違うものだと思いますが、まあ階級だけに注目すれば近くないわけでもないかという。

この辺はいろいろ面倒なんで深く突っ込むのはやめにして。

操兵の構造や製造法なんかもそうですね。魔法の産物なんだから、魔法の鍋になんかいろんな粉とか骨とか突っ込んで、呼び出した小人の鍛冶屋にでもトンカンやらせれば完成でも間違いではないんですが、それじゃあ聖刻じゃないですし、当時はそれじゃあおとぎ話じゃんって空気だったんで(現在だとかえって新味もある気がしますが)。
かわりに少なくともワースブレイド(年代記)では、操兵は鍛冶師が手仕事である程度決まったパーツを打って組み上げていくという代物で、ファンタジーの産物的な空気の醸成を試みています。必要になる技術を考えると文明レベルがまったく噛み合ってませんが、困るところは魔法(練法とか)でなんとかしてるってことで。そういうずるをするから、文明がある一定線から前に進まないんですね。

このやり方は、別にこちらが思いついたことでもなんでもなくて、もともと当たり前のように使われている技法です。例えば歴史物だと、舞台になる時代の世界情勢や出来事、人物などから枠組みを抽出して、それに登場人物や事件をあてはめてまるで史実のようにフィクションを語るという。SFは背景設定を自前で用意する必要がありますが、やることは同じです。ここでも歴史的事件や人物なんかをモデルにすることがありますし(e.g.銀英伝)。

日下部匡俊

いや偉そうに講釈垂れるのが目的なんではなく、いままで書いてきたことで、日付単位で一見すると矛盾する姿勢に思えるかなーと勝手に考えたもんで。そんだけです。