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黒竜戦争について。
黒竜戦争とは、黒竜神(デグマト・ドラゴナス)を信奉する民、ラズマ氏族の黒の帝国(ダカイト・ラズマ)と、北部アハル人との10年以上にわたる戦争のことです。
この手の戦争にありがちで、帝国:北部同盟の戦力比は1:10以上の開きがありましたが、その差を先進的戦略、戦術によって覆し、少なくとも当初は帝国優位で戦局が推移しました。これは、当初の戦場が北部の中心地から遠く、同盟が戦力を送り込みにくかったこと、北部同盟自体がおよそ一枚岩と呼べない状況にあったことなどもありますが、最大の要因は、帝国独自の操兵による、当時としては画期的な戦術(専用操兵による密集隊形と、それを囮にした遊撃部隊による奇襲)、周到な兵站の準備、確保が行われていたことでしょう。
当初、帝国が攻略したのは、帝国の版図とされるリンデン半島南端の古き国々でした。こうした国には、偉大な古代の遺物が保管されていることがほとんどで、帝国はこうした数々の遺物を手に入れることで、工呪会から仮面や機体を購入したようです。
加えて、帝国はラズマ氏族以外の人間を進んで雇い入れ、こうした傭兵たちを遊撃部隊の主力に据えています。金(やその他の価値あるもの)で忠誠を買っているわけですが、変に生まれや情で縛るより、こっちの方がよっぽどちゃんと戦ってくれるという話ですね。すぱっと割り切って逃げちゃうこともあるけど、どうせそんな戦況で逆転なんて考えない方がいいんで(仮に勝てても戦力の被るダメージが半端ない)。
が、やっぱり戦力差は正直で、北部連合が本腰を入れたとたん、黒の帝国は追い詰められていきます。その布石としてあったのが、連合軍による帝都リ・ラズル侵攻で、確かにこの時点では帝都はその守りの堅固さを見せつける結果にはなったのですが、その代償として奥の手である12体の皇帝護衛機〈ムーン・ドアーテ〉を見せざるを得ず、防衛体制の弱点についても知られてしまうことになりました(もちろん、数百の連合軍操兵を敗走させたのは、このムーンの力で間違いはないのですが)。
この作戦の裏で、すべてを取り仕切っていたのがソーダリ国のマナリアード王子と言われています。後の世に、西方史上最大の策謀家として知られることになるかの人物ですが、この計画を推進した動機は、個人的怨恨だったようです。
拙著『黒竜戦争・双生の戦士』を読まれた方はおわかりでしょう。そうです、彼、本気で恨んでるんですよ。あんなスカしてるのにね。
まあ、帝国はその気になればもっと早く南下できましたし、外交戦略を駆使して友好国作って周囲を固めてから、ガウアス諸国を攻めて南部との経路を寸断、連合国が焦って出てくるのを待って叩くというやり方をとれば、たぶん五分以上の戦いができたはずなんですが。もちろんそんな気がないのは明白なので、戦略性のなさを意図的に見せつつ、終盤無様な戦いに終始したわけです。
帝国軍人の心中やいかにといったところですね。
日下部匡俊