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西方におけるガッシュの帝国以外のフェルム人の最大居留地というと、やはり北西部のガウアス諸国だと思うわけです。
ここいらは北部と直接つながってるんで、あっちの文化がしっかり流入していて、かなりアハル人との文化的同化が進んでます。ですんで、ここのフェルム人が突然先祖返りでもしない限りは、ガッシュの帝国のような大きな脅威にはならないでしょう。
そもそもここの人たちは、数世紀前から文化的、宗教的にうまい具合に分断されていて、互いに牽制し合うような状態だったので、一枚岩になって北部を脅かすっていう状況は考えにくかったんですが。
でもまあ、ありえなかったわけでもなく。
西方暦8世紀のメールバーデンの魔女事件ってのがあったんですが、ここに登場するマルガルさんは、あの黒の帝国のマルガルさんと同一人物です(断言)。じゃあ、彼女、何をしようとしてたのかというと、実はメールバーデンってフェルム人系の国でして、ここの少数派のアハル人層と対立関係を作ろうとしたんです。
その企みは非常に巧妙で、真面目にガウアス諸国が民族単位で分裂して大戦争になりかけたっていう笑えない状況までいっちゃったんですが、当のマルガルがとんでもないヘマをやらかして、すべてが水泡に帰したわけですが……そんなわけないですよねー。
もちろん、わざとやったことです。どうしてかというと、西方人に共通の敵がいるらしいことを暗に匂わせるためです。
こういう布石は、歴史上明らかになってないだけで、かなりの数存在しているはずです。黒の帝国そのものが登場するのは、それからさらに1世紀以上経過してからのことですが、もともと西方中を旅して回る芸人たち〈モンペール族〉は、帝国を構成する民族〈ラズマ氏族〉の密偵なので。草と言ってもいいですね。
関係ないですが、ラズマ氏族というだけあって、ほぼ全員が(遠縁ではあるが)血縁関係にあります。どんなに無関係に思えても、家系をたどれば数代前には共通の先祖が必ずいるほどだったりします。遺伝の問題は大丈夫なのかって話はありますが、そこはそれ、ファンタジーだし(ここでごまかすのか!)。
ただ、この民族が純血を頑なに守っていた理由は、他の民族から徹底して孤立するためだったことは間違いありません。
理由は、デイル編の10巻にしっかり書いてあるので、当該箇所をご覧いただければ。マルガルさんが延々ネタバレ喋ってます。
ああ、話を元に戻さねば。
そんなこんなで、北部平原の策略と、黒の帝国の密かな後押しのおかげで、西方がフェルム人の手に落ちることはなかったのでした。
でもそのうち、フェルム人の中から民族主義の指導者が出現して、いきなり西方を分断する戦争を起こすなんてことがあるかもしれませんが。まあ、南部大戦というイベントがある以上、ワースブレイドの歴史の範囲では起きない可能性が高いでしょう。それどころじゃないんで。
日下部匡俊