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ガッシュの帝国って、実は西方の地形のおかげで異常に勢力を伸ばしちゃった国家です。
なんせ、北から南、南から北へと移動するのに、沿岸を移動するしかないので。南部から南西部、そこから北西部へと移動するのは、陸路の困難さを考えると沿岸航路を取るのが一番で、これはおそらく西方の科学技術がリアル現代レベルまで発達したとしても、航空機に頼る以外解決法がないと思われます。
航海術および船舶の技術発達を考えれば、年代記だとなんだかんだで半年かかってるのを数日レベルまで短縮できるとは思いますが。

とにかく、東方と西方をつなぐ大街道の交易品を北部にもたらすには、海路を使うしか方法がありません。というわけで、必然的に間にいる海運業の連中が潤うわけです。
この海運業を担っていたのが、南部地域に住み着いたフェルム人(中原系)たちで、彼らは最初純粋に商行為としてこれを始めたのですが、途中で出没する海賊やら、そもそもおまえらが海賊だろうっていう感じだったので、交易品を運ぶ船団そのものが武装するようになっていきました。
海の上って無法が普通に通用する世界なので、自分たちが法になるしかないのです(だからこそ、遭難しそうな船や溺れる人間は、必ず助けるっていう不文律があるわけで)。

そのうち西部のフェルム人が営む海運業者と争うようになり、なんだかんだあって南部の同じフェルム人たちの間でも争いごとがあって、一時、沿岸航路がまともに機能しなくなったことがあります。それじゃ困るんで、北部の国々がフェルム人たちの調停に乗り出します。正確には、このままフェルム人に好き勝手やらせてたら、西方全体がこいつらのものになっちゃうので、北部アハル人国家の連中が干渉する機会を狙ってたんですけどね。

逆に、これがなかったら、とっくに北部は凋落していたと思います。地理的に、南部の方が圧倒的に有利ですから。田舎だし、人が住むようになってからは歴史が比較的浅いので、まだ逆転するには時間がかかったでしょうが、もうちょっと早まっていたと思うんですよね。という言い方からもお分かりの通り、そんなに遠くない未来、北部は古い国々が細々と日々を送るだけの土地になっちゃいます。9世紀末くらいには。

それはまあ本題ではないのですが。
紆余曲折の後、北部の調停によって、なんとかフェルム人の統一国家が成立します。この国の人々は自らの歴史的英雄ガッシュ(ガーズレイドが本名だが、誰もそれでは呼ばなかった)の名をとって、この国をガッシュの帝国と呼びました(正式名はガーズレイド海王国。でもガッシュの帝国の人間は、正式名を知らない方が多かったり)。帝国ってのは愛称みたいなもので、実際は王制らしいですが詳しいことは知りません。というか、王様いないと思います。たぶん、最初はいたんですが、部族単位で王位を争い合って、挙句陸でふんぞりかえってる王様なんか意味がないだろうってことになったんではないでしょうか(精神的に英雄のガッシュさんが一番偉い人ポジションで、それでみんな納得してるんでしょう)。
てわけで、実際は各部族(大別してバセスカ、アレトスカ、ラカマン。主な違いは宗教。北部の連中の策略にはまった形)による合議によって運営されていて、その単位に分裂した国家だと言うこともできます。この国が一枚岩にまとまったりしたら、下手をすると北部の国々が束になってもかなわないような勢力になっちゃう危険もあったりなかったり。

西部沿岸のフェルム人は、黒の帝国の侵攻を意図的に喧伝することでうまく危機感を煽って、ガッシュの連中同様に宗教的に取り込んだり、商業的にバランス取ったりして、勢力が一本化しないようにコントロールしています。
というわけで、フェルム人の統一国家はガッシュの帝国だけです。そして帝国は経済的に強い影響力を持っているものの、なんとか折り合いをつけて南の海を支配している異民族国家という位置付けに落ち着いています。

ちなみに操兵はあんまり持っていません。彼らは海戦を得意とするので。そして、少なくともワースブレイド(年代記)では、水上の操兵は役立たずです。

日下部匡俊