聖刻ノ猟手の解説でひとつ触れるのを忘れていたことがあります。ユキムの眼鏡のことです。
眼鏡は、実は作るのが結構大変です。つるの部分の工作精度はもちろんですが、透明なガラスを度付きで仕上げる技術が結構難易度高いからです。ガラスレンズを作るということは、透明度が実用レベルで、かつ曇らせることなく研磨する必要があります。研磨には相当の手間がかかりますし(でも職人技でなんとかなる)、透明度の高いガラスは化学が未発達に近い世界では作るのが困難です(大昔にイシュカークが成し遂げたものではありますが、失伝している可能性も高いです)。
というわけで、目をつけられることを恐れていたはずのユキムが、必要だったとはいえそれを普通につけていたということは、この技術が相応にコストダウンしていて、けっして珍しくはなくなっているということを示しています。贅沢品には違いないと思われますが(実はヤカ・カグラでこんなものつけてる人間はほとんどいません。ユキムは故郷の基準でつけて大丈夫と考えたのでしょうが、むしろよく無事だったなというところです)、場所によっては陳腐化しつつあるってことですね。
伊達に未来の話ではなくて、微妙な部分で技術革新が進んでいたりするわけです。鍛鉄を割と手軽に扱えたりとかね。この辺は1092や群龍ですでに達成されていることかもしれませんが。
ちなみに、1092時代の高級操兵に使われているセラミック系の複合素材(って聞いた記憶がある。ヴァシュマールとかそんな感じのはず)は完全にロストした技術です。ヴァシュマールのは技術じゃないしな。
たぶんボールベアリングはもう存在しています。高級機はそういう技術がふんだんに使われていることでしょう。ベアリングってあれを作る工作精度もそうですが、素材が重要なので、作るのかなり大変なはず。合金を作る技術は相応に発達していると見て間違いないでしょう。火器だって、並みの素材じゃ威力頭打ちになっちゃいますし。まあ、頭打ちなんですが。
日下部匡俊