剣の聖刻年代記には〈秘装八者〉なる存在が登場します。位置付けとしては世界の監視者です。彼らが危機感を覚えれば、八の力やその他の世界の防衛機構とも呼ぶべきものが動き始めると言われています。ただし、それは彼らの意思で自在にそうしたものを操れる、ということではありません。
彼らは世界が生み出したそういう存在です。操兵に酷似した肉体を持ち、魂として人間に見える超高密度の霊体を持っていますが、それは人工的なものではありません。操兵に酷似した、というのも厳密には間違いで、人間がこの秘装八者や八の力などの秘操兵と呼ばれる連中を見て、その似姿として作り上げたものが操兵だと考えられています。

なんせ秘装八者も八の力も、人間が出現する遥か以前から存在しているので。

じゃあそんな昔からいたのになぜ人間に似ているのか、と言えば、人間の方が彼らの影響で現在の形になったからです。
指輪物語ではありませんが、太古の人類は現在の比較にならないほど強力でした。長命で力も強く、数々の超能力を持っていたと考えられています。黒の帝国のマルガル・チト・キデンはそうした種族の末裔です。血が薄れ、能力の大半は失っていますが、それでも千年単位の寿命を持ち、超人的な集中力で〈招霊衡法〉を使いこなす怪物です。
現在の人間がひ弱なのは、この超人たちが下僕として生み出した存在だからです。力を持たないかわり、繁殖力が大きく、あっという間に数を増やす(超人たちの時間感覚では)ので、超人たちが争いで自滅した後、地上を支配したのがこの作られた人々なのも、ある意味当然だったと言えます。

ところで、古代の超人類たちが軍神と巨人と呼ばれる操兵(と、それ専用の乗り手=戦士)を作り、争いあって西方の各地を焦土と化した(cf.デイル編)にもかかわらず秘装八者が干渉しなかったのは、現在から見れば非常に強力な操兵でも、彼らの尺度ではたいしたものではなかったからです。
彼らが反応する異変とは、八の力が内向きに本気を出した時や、外界の神が世界に侵入した場合、あといくつかの例外的な出来事に限られます。というか、彼らが反応した場合、たぶん世界は存亡の瀬戸際にあることがほとんどなので、できればこの先ずっとお出まし願わない方がいろいろ平和でいいと思います。

出てくるんですけどね。もう一度。

日下部匡俊