このシリーズを初めてご覧の方は、まず最初に『聖刻シリーズとは』『聖刻日記 #3』などをご一読いただけると幸いです。
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えっと、このように西方の歴史はペガーナがその半分以上を紡いできたと言って過言ではないわけですが、そもそも、なんでTRPGにこんな生臭い話を持ち込んだのかっていうのを少々。

宗教は、普通に歴史関係をかじると黙っていても避けては通れない題材です。歴史の大半は宗教とは切っても切り離せない関係にあります。現代社会だって、古来の宗教にどれだけ縛られてるか、ちょっとだけ実例(例えば現職のUSA大統領が、イェルサレムの首都がどうとか宣言しただけでなにが起こりそうになって、どうやってみんなで火を消そうとしたか、最近のニュースに目を通していればよくお分かりかと思いますが)を挙げて考えるだけで軽く目眩を覚えるほどです。
いや、だからって現実の宗教批判をやるつもりではないんです。それやっちゃったらフィクション扱ってる人間の負けじゃないですか。参考にするのはいいけど、引用したりデフォルメかけずにそのまんま使ったりしちゃ、妄想に生きる物書きの名折れってもんです。
ペガーナは、歴史上宗教の果たしてきた役割や結果を、架空世界のそれに置き換えて新たに構築し直したものです。これをやってる最中は、最高にエキサイティングでした。アハーンの中で、既存で現実の宗教と関係のない宗派を作り上げていく作業のなんと楽しいことか。というか、現実に学べば宗教の奥深さや闇の部分なんか、一個の人間の思いつきなんて全然軽くて、だからあえてそういう重みとかはかっ飛ばして、個別の事件の興味深さや滑稽さなんかを抽出する方向でやったんですけども。
本気でこういうの扱い始めたら地獄ですよ。比喩ではなく。

別に文化人類学をやろうってわけじゃなく、宗教学でもなくて、人が何百、何千年と生きてきた世界に現実感のある重みを持たせようとしたっていうだけのことなんですが。ええ、「だけ」です。だから、できるだけ現実とは無関係の描写や内容になるべく、労力だけは注ぎました。
d20版で、僧侶たちの階級の名称に手を入れたのも、昔の資料を紛失して適当に作り直したわけではなくて、意図的なものです。現実の宗教とは切り離して見られるようにしたかったのです。

これは宗教の話ばかりに限らず、国家や小集団での話も一緒です。どうしたら自分たちを滅ぼすような内輪揉めを、理屈気にしないで始めちゃえるんだろう、とか、何百年も栄えてた国家がほんの数年で滅んじゃうのなに? とかですね。
こういうのって、他の話にも応用できるんで、ゼロから設定を起こすときとか重宝してます。これを個人同士の対立あたりを発祥にすると、ただの喧嘩が国家を揺るがす大事件というか遺恨になるっていう。個人的に関わらせられるのは勘弁ですが、端から見ててこんなに面白おかしいものもありません。

日下部匡俊