梅雨がようやく明けましたが、むしろ風が涼しくなっているのはなぜだろう。

聖刻シリーズとはなんぞやという話はここ。シリーズの作品紹介はここです。
いや、たまには書かないとと思って。

料理の話。
こう、どうしても素材とか極端に違う感じではないし(巨獣とかを捌いても、結局取れるのは肉でしかないし)、むしろいろいろ合成したり成分抽出したりする技術を持ってる現実のわれわれの方がよっぽど奇想天外な食材を手に入れやすいので、こういうファンタジー世界の食事ってのは割とわかりやすい範囲に収まってしまうわけですが。
しかも、人間の食に関する執念ってのはもうナメたものではなくて、現実に存在する料理法なんか調べたらびっくりするくらい種類があるし、どうしてそんなやり方を思いついたってのもたくさんあるので、そこらへんにファンタジーを求めても勝てそうにありません。
というわけで、少なくともわたしの関わったワースブレイドや剣の聖刻年代記では、あんまり面白い料理は出てきません。それどころかワンパターン&思いっきり地味なものばかりです。なぜなら、そんなに食材にリソースつぎ込めないから。

穀類はとにかく手を加えなくても育ってくれる強いのが中心で、味なんか二の次です。その中でも味のいいものが中心にはなっていくでしょうが。生産性や環境変化に備えた品種改良ですら、余裕のない世界ではなかなかできません。そんなことができるのは文明圏の比較的豊かな場所だけで、そこからじわじわ広がる可能性はありますが、いやしかしそんな作物は戦略物資になってしまうので、むしろ特定の連中が独占してしまうかもしれません。
で、そういう洗練されてない穀類挽いて作った砂混じりの粉でぼそぼそのパンや麺類作って食べてると。うまいわけがないですな。空腹は最高の調味料だし、慣れってものもあるのでなんとも言えませんが。ちなみに作り置きできるパンに比べて麺類は手間はかかりますが、粉と水(と塩)さえあればなんとかなるし(乾麺にすれば手間も省ける)、他の食材と合わせて食べられるので。調理法も茹でるだけだし。

野菜関係は根菜ばっかり。果物や葉物野菜とか、そういう高級かつ日持ちのしない代物は文明圏の富裕層だけのものです。野生の果実や茸は生えている場所に行けば手に入るでしょうが、いつも手に入るわけではないし、日常の食事には出てきにくいかもしれません(茸は腹は膨れないし毒はあるしで、特に旅先の食事ではリスクが大きい)。ビタミン不足になりがちなので、その辺の補給は雑草から。

高級野菜よりはよっぽどなんとかなりそうなのが肉。乳製品とかは牧畜が発達しないと厳しいですが、それでも結構昔からあったし、チーズはものによって保存がきくので、この世界でも普及している可能性はあります。まあでもやっぱりどこにでもあるわけじゃないでしょうが。
一般人の口に入るような肉は野山にいる兎や野鳥の類、あるいは猪くらいのものでしょう。狩猟で手に入るものなので、貴重品のはず。
これをハムにしたり、悪くなっていたり、臓物なんかの臭みがきついところに香草を使いつつ煮込んだり、焼いたりするのが一般的。保存食にするために燻製や干物にするのがせいぜいで、丸焼きなんかは最高のご馳走ってことになります。逆を言えばそれ以上の料理は望むべくもないということで。

こうしてみるとなんかげんなりしますが、逆に言えば、名物、珍味の類は下手な武力よりよっぽどましな外交カードになったりするかもしれません。この世界でも、人間の食に対する執念は現実と変わらないと思われますので。

日下部匡俊