ええと、聖刻ってなんだろうって話はここ(聖刻シリーズとは)とか、ここ(聖刻日記 #3)とかで。
や、ここんとこかなりマニアックな話に行ってたんで、いい加減基本に引き戻さないとって。
うへえ、まったくその通りでございます。

さて、上記のリンクの内容と一部被りますがご容赦を。
聖刻シリーズは、1986年、朝日ソノラマ刊行の小説誌『獅子王』創刊号より6話にわたって掲載されました『狩猟機1092』に端を発する、一連のファンタジー作品群のことです。長いですかそうですか。
代表的作品には『聖刻1092』、『ワースブレイド』、『聖刻群狼/龍伝』、『剣の聖刻年代記』などがあります。そして、その最新作品として、ついに昨日『聖刻-BEYOND-』1巻が刊行されました。

さて。
聖刻シリーズは、基本的にアハーンという名の大陸を舞台にした(BEYONDはまだわからないんですけどね)ヒロイックファンタジー作品です。これは#3にも書きましたが。
剣と魔法と巨大ロボの登場する……と書くと安っぽい気もしますが、その辺りは世界設定を細かく作り込むことで、それなりに整合性をとっている次第です。まあ要するに食わず嫌いしないでってことですが(笑)
新作の聖刻-BEYOND-では、特に「ヒロイック」な部分が少なめで、かわりにホラーやサスペンスの要素が強まっています。なので、従来のシリーズと異なるので敬遠される向きも多いようですが、そこはまさに食わず嫌いせずに、としか言いようがありません。
もうこれはネタバレじゃないと思うんで書きますが、なぜ、作中に黒の王、白の王が登場するか、ということです。彼らは紛れもなく1092のアレで、だとしたら、どうして別作品のはずのBEYONDに出て来ているのかというところをお考えいただければ、今後の展開に夢も膨らむかと。いえ、あっちの登場人物は出て来ませんけどね(少なくとも自分の知る限りでは)。

このシリーズは複数の作者によっていくつもの物語が発表され、非常に多様性に富んだものになっています。
それぞれの作品紹介については『聖刻シリーズとは』に譲るとして、とにかく、同じ聖刻の名を冠していても、作品ごとに描かれる内容は大きく異なっています。
例えば1092では超絶的な操兵と超人たち、そしてそれに翻弄される人々について語っていますが、群龍伝ではただの人間にすぎない人々の争う様子が、剣の聖刻年代記はもっと世界全体に関わる物語がそれぞれに描かれているわけです。
この他にも、90年代半ばに発表された『聖刻覇伝(ワースジード)』や『ブリーダーズワース』などがあります。残念ながら、かなり入手困難になってしまっていますが、とにかくこれらの作品もまた独自の色を持ったものに仕上がっています。
いやほら、そこはそれ、いくら受けたといっても1092のデッドコピー量産しても意味がないので。まあ、作者ごとに自分の書けるものを心の命ずるままに書いた結果といえばそのまんまなんですが、その自由さもこのシリーズの一つの特徴といえましょう。

さて、聖刻シリーズにはゲームも存在します。『ワースブレイド』と呼ばれるのがそれです。この他にも、90年代半ばにSFCやPS1版のビデオゲームもリリースされました。
まあ、ゲームについては機会を改めて、また。

日下部匡俊