聖刻シリーズが初めての方は、『聖刻シリーズとは』、『聖刻日記 #3』などを一度お読みいただければ。
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またワースブレイド(剣の聖刻年代記)限定の話です。
アハーン大陸西方に操兵が登場して、どうやって使われてきたかの顛末。
そもそも、アハーン大陸西方には、歴史的な記録が残され始めた頃には操兵は存在していませんでした。伝説として、古代の操兵の戦いやらなにやらが残されてはいましたが、動く操兵そのものはどこにもなかったということで。
まあこの頃から生きている人間は(表向きは)いませんから、これも本当かどうかはわかりませんが。
とにかく、昔の西方は、われわれの知る世界と一緒で、頼りになるのは生身の肉体と武器のみ。戦争の有様も、さして変わるものではありませんでした。練法師は、その歴史的背景から見ても存在していたことは間違いのないところですが、この時期の西方に介入していたかどうかはわかりません。
最初に操兵が登場した時期は諸説ありますが、西方暦2世紀末の異民族(西方のアハル人にとっての)ルーハスの侵攻に対して用いられたのが最初とされています。ルーハスはどうやら西方人とは異なる髪を信仰する民族だったらしく、その奇怪な風習や容貌がわずかながら記録に残されています。
異民族ルーハスの侵略といえば単なる民族間の争いに感じられますが、東方の異界神の侵入に匹敵する大事件だった模様です。
ワースブレイドでは西方工呪会は秘密の組織で、世間からはその正体を一貫して隠そうとしていますが、このルーハスとの戦いには唯一工呪会の名前が登場しています。この事件は、それほどまでに大事だったということの照明かもしれません。
で、この時の操兵は、この後に鍛冶組合からリリースされる操兵とは実はミッシングリンクとなっております。詳細な記録もなく、どんな操兵だったのかほとんどわかっていません。〈獣機〉(東方のそれではない。西方では、従兵機に近い形状の古操兵を指す場合が多い)という表記が散見されるようですが、形状に関する描写は、一部の口伝や、ルーハスとの戦いとは無関係な方面にいくつかその記述を見ることはできますが、統一性もなく、最近になって捏造されたものや、伝聞の伝聞が大半のようです。
鍛冶組合が実際に操兵を作り出し、国家に売るようになったのはその30年ほど後だとされています。やはりこれらの操兵も獣機と呼ばれていますが、それは単に操兵の名称がまだ確定されず、比喩的に獣機と呼ばれたものがそのままこの時期一次的に定着しただけのようです。
これから50年ほど経過して、ようやく現在の狩猟機にあたる機体が登場します。これはそれまで狩猟機が存在しなかったわけではなく(古操兵に狩猟機が多数存在することからも明らか)、鍛冶組合(工呪会)が原始的な獣機から狩猟機タイプに切り替えたのだと思われます。
ここまででまだ西方暦3世紀……あと6世紀ほど残ってるぞ。というわけで、最低あと1回は続くと思われます。すいません。
日下部匡俊